耳鼻咽喉科・アレルギー科・気管食道科 医療法人社団くまいクリニック

アレルギーのこと

口腔アレルギー症候群(OAS)

口腔アレルギー症候群(OAS)について
ーりんごを食べると、かゆくなりませんか?ー
はじめに:欧米では、1940年代から果物やナッツ類を食べると口腔がかゆくなることが知られており、特にシラカンバ花粉症の患者に多いといわれていました。他の花粉症ではヨモギ、ブタクサ花粉症でもみられます。これらは15年位前から口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome=OAS)と呼ばれるようになりました。原因となる特定の食物を食べると口腔、咽頭、喉頭粘膜のアレルギー反応が最初に起こり、その後に他の症状が起こってきます。北海道ではシラカンバ花粉症の20%から40%に合併するといわれており、最近では、シラカンバ花粉症患者さんの増加と共に、OASが増加しています。本州でもシラカンバ属のオオバヤシャブシや他の花粉症でも稀に報告されるようになりました。昨年のシラカンバ花粉飛散時期に当院にこられた鼻アレルギー患者さん678名中、276名のシラカンバ花粉症患者さんを対象に調査した結果をまとめたのでお話します。
OAS原因食物:原因となる食物(抗原)は、バラ科果実(リンゴ、ナシ、モモ、サクランボ、アンズ、プラム、ビワ、イチゴ)が多く、その他の果実(メロン、スイカ、バナナ、ブドウ、ミカン、パイン、キウイ、マンゴ、アボカドなど)、野菜(セロリ、キュウリ、トマト、ナス、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、ヤマイモ、パセリ、フェンネルなど)、木の実(ヘーゼルナッツ、ピーナッツ、カシューナッツ、クリなど)など多岐に渡っています(表1)。
症状:OASの初めの症状は、三叉神経支配領域(口唇、口腔、咽喉頭部)の、かゆみ、ひりひり感、知覚過敏、たたかれたような痛み、浮腫、腫れ、水疱、のどのしめつけ感などが多いようです。それに引き続き、鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻つまり)、流涙、顔面の腫脹、胃腸症状、全身症状などが起こることがあります。中には重篤な症状(蕁麻疹、ショック、呼吸困難など)も起こります。今回調査した276名のシラカンバ花粉症患者さんの中でOASを合併されていた方は、135名、48.9%でした。原因食物の種類は多岐に渡っており、84%の患者さんが複数食物に反応していました(最多:18種類)。最も多い症状はかゆみと腫脹でしたが、咽喉の絞扼感4.4%、呼吸苦8.1%、咳3.7%、蕁麻疹3.0%、消化器症状8.1%なども見られた方がおりました(表2)。原因食物摂取後、ほとんどの患者さん(88.2%)が15分以内に症状を自覚されています。当院でのOASの臨床的特徴は、シラカンバ花粉症の約半数がOASを合併していること、複数原因抗原が多いこと(84%)、発症時期の予測が出来ないこと、原因抗原が経時的に増加すること、症例の低年齢化、治療法が確立されていないことなどです。
診断法:当院で行なっているOAS の診断法には、詳細な問診、血液検査(抗原特異的IgE抗体の検出)、抗原を用いた皮内反応(プリックープリック=テスト)などがあります。
当院の治療:基本的には原因となる食物を食べないこと(抗原回避)や薬物治療が主体で、急性期の重篤な症状が起こったときは、ショックに準じた治療が必要です。咽喉がかゆくなるだけならば、良いのですが、咽喉の粘膜が腫れて息苦しくなることもありますので注意が必要です。症状を抑さえる保存的な薬物治療として経口薬(抗アレルギー剤)を3か月から6か月の間服用する方法もあり、有効な方もいらっしゃいます。予期せぬ原因食物をたべることによって症状がでることがあるため、当院ではOASの患者さんに緊急時に服用するお薬を常時携行していただくようにお話しし、守っていただくよう指導させていただいてております。
今後の課題:お子さんのOASの方では、食べるとかゆくなることから自然と食べなくなることが多いようです。また、繰り返す不快で重篤な症状(顔の腫れや蕁麻疹など)の為、恐怖心から食べることや食物に過剰に反応して、極端に食べる物の種類を少なくすることが有り、お子さんの場合には、特に、症状を抑さえる治療と共に心のケアを含めた治療が必要な症例もあります。成人のOASの方では、今まで長年食べていた果物で、突然かゆくなったり、食べられないものが少しずつ増えてくるのが特徴です。詳しく問診すれば比較的容易に診断がつくOAS という病態ですが、どうして起こるかなどは未だ明らかにされていません。原因食物が時間と共に増えていくため、OASの患者さんは将来的に食べられる物がかなり制限されることが予想されます。人類が末永く口から栄養素を取って生命を維持することができるためにも、OASの詳細を解明することが必要です。御不明な点があれば、お気軽に御相談下さい。
この結果は、昨年9月の第13回日本口腔咽頭科学会シンポジウム「口腔咽頭領域のアレルギー」(名古屋)、本年7月の第6回日本ラテックスアレルギー研究会OASフォーラム2001(名古屋)の中で講演発表しています。また、詳細をまとめた論文は日本口腔咽頭科学会会誌13巻2号に掲載されています。

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