耳鼻咽喉科・アレルギー科・気管食道科 医療法人社団くまいクリニック


鼻のこと

鼻出血

鼻出血の内、病院で治療を受けるのは数パーセントと言われています。血の止り方が正常の人であれば、テイッシュで鼻に栓をして両側の鼻翼(こばな)を圧迫して、下を向いていれば15分位で止血するのが普通です。でも、何度も繰り返し出血したり、血が止らなくなり救急車のお世話になったり、入院治療が必要なこともあります。統計的には男の方が多く、5歳から10歳までの学童期と15歳から25歳までの思春期に多いと言われています。この年代は鼻の衝立(鼻中隔)の手前にあるキーセルバッハ部位からの出血がほとんどです。また、50歳以上で65歳前後にも高いピークがあります。年配の人の出血点は鼻腔の側壁や後部からが多く、出血量も多く止りにくく、ひどければ致命的になることもあります。鼻出血の原因は、鼻粘膜の機械的刺激により血管が切れたり、炎症やできもので血管が弱くなっていることが多いようです。全身的には出血性素因があったり、心、腎、肝の病気があり血が止りにくいことが原因の場合もあります。また、思春期の女性で月経が始まる直前に頻繁に鼻出血を繰り返すことがあり、代償性出血と呼ばれています。血圧が高かったり、鎮痛剤の連用、アルコールの取り過ぎ、肝障害、女性ホルモン(特にエストローゲン)の低下なども誘因になります。このようにいろいろな原因、誘因で鼻出血はおこりますが、耳鼻咽喉科専門医が出血点を確認し、薬や電気凝固で焼くと大体止まります。それでも止らなければ、がーぜや充填物(スポンゼルなど)を詰め込んで安静にしていてもらうこともあります。注意しなければならないのは、年配の人の場合で、出血点が不明で動脈性(拍動性)に出てくるのは、1000cc位の多量出血をきたしショックを起こすことがあります。この場合は、入院が必要で、鼻の処置で止らない場合は、手術的に動脈(顎動脈または外頚動脈)を結紮することがあります。鼻血が出たときは、血が出ている鼻の穴にテイッシュを詰め、両方のこばな(鼻翼)を左右からつまみ、下を向き、口に流れてきた血や血の塊は吐き出します。血を飲み込むと後で吐き気、嘔吐の原因になります。15分から20分経っても止らなければ、慌てず、騒がず耳鼻咽喉科専門医へ急行してください。

鼻アレルギー

原因となる抗原が鼻に入り、鼻粘膜の下にある肥満細胞の表面についている免疫グロブリン(抗原特異的IgE)と結合します。すると肥満細胞が壊れ、中から化学伝達物質が放出され、神経終末を刺激してくしゃみがおこり、粘液腺から鼻汁が分泌され、毛細血管が拡張して鼻閉が起こります。生理的には、身体にとって不利益な物(抗原)をくしゃみで吹き出し、鼻水で洗い流し、鼻粘膜を腫脹させて、これ以上の侵入を防ぐという合目的な反応と考えられます。一年中症状がある通年性の原因にはハウスダスト、コナヒョウヒダニ、カビなどが考えられます。季節と関係する原因(抗原)が花粉である場合を花粉症といいます。鼻の粘膜に直接噴霧する局所治療薬もいろいろな種類があり症状に合わせて選択できます。薬局で売られているものを2週間以上続けて使うときは医師に相談した方が良いでしょう。症状を抑さえるために、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などを服用し、さらに鼻の中に噴霧する局所噴霧剤を併用します。どんな薬でも良いというわけではありません。いろいろな薬がありますから、年令、症状、日常生活の支障度などを考え、その人にあった薬を選択して、不都合があれば変更しながら使っていただくようにしています。治療の基本は、免疫能を保存しつつ、原因に対する症状を抑さえることにありますから、患者さんにあった薬を選択し、できるだけ少ない量で最大の効果をもたらすようにしています。ひとりでも多くの患者さんが最小限の治療で健やかに過ごすことができるように、きめこまやかにお手伝いをするのが、アレルギー専門医(アレルギー学会認定専門医)でもある私の使命です。

血管運動性鼻炎

原因が特定できず、温度変化などの物理的刺激で鼻アレルギーと同様の症状を示す疾患です。鼻アレルギーに準じた治療で効果が期待できます。

花粉症

北海道の春の樹木花粉症の代表はシラカンバです。
シラカンバの花粉は根雪が解ける前には飛散しないことを過去15年に渡る我々の研究結果が示しています。つまり予防的治療は雪が残っているころから始めると効果が上がるのです。イネ科花粉で代表される夏の草には、カモガヤ、オオアワガエリ(チモシー)、スズメノテッポウなどがあります。花粉の飛散する範囲は広くありませんが、生活空間に密着しているために、散歩や自転車で走ると症状が出るという方が多いようです。雑草の植生する範囲が少なくなってきたために患者数が減少しているようですが、旭川市内や周辺にはまだまだ雑草がたくさん見られます。秋には霜が下りる前まで、キク科のヨモギ、アキノキリンソウなどの秋の花粉症があります。花粉が実際に飛び出したら、症状を抑さえる治療には来ていただきますが、患者さん自身ができることをいくつかお話します。まず、第一に花粉と遭遇しないこと。花粉飛散時期には違う場所に移動したり(転地)、外出を控えたりします。現実的には無理ですので、実際に外出するときは、眼鏡(素通し、サングラスなど)やマスク(花粉用マスクなど)を装用して、眼・鼻に入る花粉を出きるだけ避けることに努力します。マスクは内側を少し濡らすと効果的です。雨の日には花粉も下に落ちますので、比較的吸うこともなく快適です。かぜの強い日や木がたくさん生えている所(例えばゴルフ場など)への外出は控えた方がよろしいでしょう。外出から帰ったときは、できるだけ花粉を家の中に入れないような努力が必要となります。外で着ていた衣類は脱いで、シャワーを浴び、頭、顔、眼、身体を清潔にしましょう。家の中でも症状がひどいときは、掃除をきちんとして、シャワーの後に対症療法をすると良いようです。窓を開けるのも雨の日が良いと言われています。また、布団、カーテン、縫いぐるみ、絨緞などに花粉が吸着されやすいので、できるだけいつも洗濯をして清潔に保つようにしてください。季節前にできる治療は抗アレルギー剤を2から4週間服用する方法と鼻粘膜を炭酸ガスレーザーで灼く方法があります。対症療法は、免疫能を保存しつつ、花粉に対する症状を抑さえることにありますから、患者さんにあった薬を選択し、できるだけ少ない量で最大の効果をもたらすようにしています。

鼻副鼻腔炎

30年以上前の日本では黄色から緑黄色の鼻汁が出る副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)が主流でした。その原因は周囲の衛生環境などいろいろ言われていますが、確かなことは不明です。いまでも上気道炎(いわゆる風邪)がひどくなり黄色の鼻汁が出てくる急性の副鼻腔炎や、慢性化した慢性副鼻腔炎も見ることがあります。副鼻腔炎の発症は鼻の中の解剖学的特徴によるといわれています。鼻の中には上、中、下甲介という粘膜を被ったでっぱりがあり、その隙間に副鼻腔である上顎洞、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞などと通じる細い穴がつながっています。昔は細菌感染によって、今ではアレルギー反応によって鼻の粘膜が腫れ、副鼻腔とつながる穴を閉じてしまいます。すると副鼻腔内の粘液が鼻腔からのどへ排泄されず、細菌感染が起き易くなります。一度感染を起こすと、空気と触れる機会も少ないので特殊な細菌が増えて、長引かせる原因となります。副鼻腔からの排泄経路が回復しなければ、副鼻腔炎も治りません。ヒトには外から侵入してきたものに対して身体を守る効果的な方法として免疫が備わっています。その一端を担っているのはリンパ系の組織です。感染を起こしたことのある鼻や副鼻腔の粘膜にもリンパ性組織の増生が目立ってきます。この頃は、鼻アレルギーから2次的に副鼻腔炎が起こることが多いようです。治療にあたり、従来のように炎症を治すことばかりを考えるのではなく、鼻アレルギーの治療を併用しながら副鼻腔炎も治そうとしたほうがよいでしょう。したがって、鼻アレルギーだからといって漫然と薬をのんでいるのではなく、きちんと鼻の中や、副鼻腔を観察しながらの治療を受けるようにしましょう。原因菌に有効な抗生物質、粘膜酵素剤、鼻処置後の鼻ネブライザーなどの保存的治療で改善しないときは、鼻内内視鏡下副鼻腔手術を行ないます。時には口腔前庭よりのアプローチが必要になります。

鼻茸(鼻ポリープ)

副鼻腔炎、鼻アレルギー、アスピリン喘息などの時に副鼻腔粘膜が腫脹し鼻腔内に飛び出してきたのを鼻茸といいます。鼻閉の増強、嗅覚障害などを引き起こします。今は鼻内内視鏡下に吸引切除するシェイバーシステムで比較的安全に切除が可能です。

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